週明け後、わたくしの気合い……というか意思の強さは、とても強固なものになっていた。
気持ち的には、週末までに全ての懸念を払拭しておきたいくらいだったが……出来るところまできちんとやっておこう、くらいにしておかないと、いざレトと出かけるというときに体調を崩しては台無しだ。
すぐにクインシーの事を、マクシミリアンとレイラ、ライラに相談し――彼女たちの指導に今後数回携わってもらう事となった。
『歌を教わるだけのはずが、なんか本格的になっちゃったわね……』とレイラが漏らしていたが、その表情は姉妹共々期待と微かな喜びが浮かんでおり、楽しげなものだった。
マクシミリアンにはいろいろ聞きたい事もあったので時間をとってもらったが、彼の返答は……。
『もう少し余裕を持って欲しいが、君もあと数回依頼をこなせば、今期は問題ないはずだ。しかし、成り行きとはいえ彼女たちを見捨てておけないとも言うだろう? 彼女たちの指導に力を入れる他あるまい』
という、先方には詳細を話していませんが何か? みたいな、悪びれもないものなのだ。
そこをつついてみると、マクシミリアンはクリフ王子の事を引き合いに出してきたので、わたくしから文句を言われる事は想定済みだったらしい。だったら先に教えといて欲しい。
金銭のことは、自分が勝手にやったことだから……と、代金の請求は拒否された。
『だいたい、君はローレンシュタイン家に仕送りを要請していないそうじゃないか。かといって、どこかで働いているわけでもない。日頃の出費だけでも厳しいというのに、その上、一体どこから彼の代金を捻出するつもりだ?』
――という、痛いところを突かれ、わたくしは黙るほかなかったのだ。
働いている……というか魔界の水や、合成したものなどをハルさんに売っているから、お金はかなり持っている。
しかし、その辺りをバラせば、わたくしが錬金術の上級者である事もバレてしまうので、ここも黙ってやり過ごすしかなかった。
『……どうしても気に入らないというなら、後期から能力給も出るだろう。そこからやりくりしてくれ』
割とマクシミリアンペースな話し合いがあり、とりあえず三人とも評価点をクリアできたら金額は教えるという事になったのだ。
◆◆◆
そんな事もありつつ。
わたくしはカレンダーを確認し、マジカル鞄に荷物や服を詰め直していた。
ああ、ついに明日よ。
待ちに待った週末がやってくる。
アリアンヌたちは明日の朝早く強化合宿に出かけるし、一応ジャンにはここに待機してもらう事になっているから、なんかあった場合すぐレトに連絡が行くだろう。
レトも明日の準備があるからと自分の部屋に戻って行ったきり出てこないから、魔界に帰っているのかも。
わたくしよりも明日の事を楽しみにしていたようだから、とても嬉しいわ……。
ベッドの上に数着洋服を並べてみては、明日はどれにするか真剣に悩んで、髪型をいじってみたりする。
鏡の向こうのわたくしも、ニヤけた顔で笑っているのだが、こんな顔もとても可愛い。誰がどう見ても恋する女の子だ。
それはそうか。彼氏と数日デート……と考えた瞬間、別の単語……【お泊まりデート】という、なんともときめきあふれるワードに変換された。
レトと人目を憚ることなくイチャイチャできるし、まだ誰も知らない魔界の風景を楽しめる……。素敵だわ……。
ちょっぴり妄想の世界にも浸りながら、わたくしは明日の旅行に備えて、早く休む事にしたのだった……。