【魔界で従者を手に入れました/37話】

エスティディアルは私ではなくヴィルフリートを見つめながら、こう教えてくれた。

「ヴィルと新しい生活をするのよ。
300年前のあの時から……わたしたちが道を違えてしまったところからやり直すの。
あの時はお互い仕事で忙しかった。だから会えなくて心が離れてしまったけれど、一緒に居られればもう、障害はない。
貴女みたいな人間にヴィルを満足させることが出来ていたなら、恋人だったわたしなら――貴女より深く彼を知っている。
貴女より、もっと満足させてあげられるもの! そうでしょう、ヴィル?」

薄い笑顔を見せていたヴィルフリートは、話の途中からその笑顔を消してしまった。

同意を求められた事により、思うところがあるらしくゆっくり眼を閉じた。

私も眉を寄せ、エスティディアルとヴィルフリートの様子を伺いながらも言葉に詰まる。

確かにヴィルフリートを渡すつもりはないけど、まだ……エスティディアルは、ヴィルフリートを愛している……みたいだった。

なんだか意地悪をしているような……居たたまれない気持ちになって、二人から視線を逸らした私の頬にヴィルフリートの指先が触れてくる。

その指先から視線を上にあげていくと、紅い瞳を私に向けて、またいつもの余裕の笑みを湛えるヴィルフリートの顔。

そして、ヴィルフリートは私からエスティディアルに顔を向け、無理だぜ、と言った。

「勘違いをしているぜ、エスティ……。お前とルカは何もかもが違うし、何より……俺達が別れたのは、人間たちの助力に追われていたせいだけじゃなかっただろ?
俺から愛情を感じないと言って、別れを切り出したのはお前だ」

びくり、とエスティディアルの身体が震える。

『でも!』とやや大きな声を出して、まだ色々告げようとするヴィルフリートの言葉を遮るように喋るエスティディアル。

「でも、大きな原因は仕事のせいよ?! 人間の欲を叶えてあげていたから――……力を使えば消耗もするわ!
毎日毎日、人間の欲は飽き足らない。奴らが願いを叶えるか死ぬまで、わたしたちは働いたもの!
心だって……疲れるのよ」

そこら辺は、人間も悪魔もそれほど変わりないようだ。悪魔が人間と手を組むっていうのは……言ってみれば悪魔にとってのサービス業みたいなもの……なのかな?

それにしても。なんだか、エスティディアルの話は腑に落ちないことばかりだ。

彼女がとても後悔しているのを感じるけど、ヴィルフリートの感情は汲みとってあげていない気がする。

私も、自分勝手でルシさん達を困らせたりしていることは多いけどさ……。

「どうして俺とヨリを戻したいんだよ? 今のお前なら、男は選び放題だろ?
俺より格好いい悪魔はそうそう居ないのは分かるが、才能を持ったやつならまだ多くいるはずだぜ? 有能な奴を探すなら、俺達に構っているヒマはないだろ?」
――こいつ、自分でも格好いいと思ってるんだ……。

悔しいけど、そうだよ。格好いいよヴィルフリートは!! 私だってそう思うよ!

すると、エスティディアルは『ヴィルじゃないと嫌なのよ!』と首を振った。

彼女の動きを追うようにさらさらと長い髪も激しく揺れて、それすら綺麗に見える。

美人は一挙一動がサマになるんだよね。私がやったら歌舞伎獅子の真似してるのかと思われるよ。

「あなたと……また、やり直したいのよ……!」

切なげに訴えるエスティディアル。豊かな胸の上に手を置いて、わたしの事をまだ嫌いじゃないなら、考え直してと懇願している。

ヴィルフリートでさえ、困ったように眉を寄せていた。

もしかしてグラッときて悩んでるんじゃないの、この人。

「……ルカ」

苦渋の決断を迫られているらしいヴィルフリートは、何故か私の名を呼ぶ。

……自分で大丈夫だとか言っておきながら……なんでここで私を頼るわけ?! 私を悪者にしたいの!?

すると、もう一息だと感じたのか、エスティディアルは私を見据えて話しかけてくる。

「ヴィルと貴女の契約が取り消しできないならそのままでいい。貴女を生かすための性処理も、一日一回なら目を瞑ってあげるわ。
だから、ヴィルを返して。貴女が頷けば、ヴィルは帰ってきてくれるみたいだもの……!」

性処理って……。私、なんか色々言われたい放題なんだけど……。

しかも。私の一存で全部決まるですって? このバカ悪魔は、何処まで女に弱いわけ?

多少の怒りを込めてギロリとヴィルフリートを睨むと、困ったような笑みを浮かべていた。

その顔を見つめていたら、ぶち、と、頭の中で何かが切れた。

堪忍袋的な何かか、私の血管かは……この際どうでもいい。

ヴィルフリートの腕を引いて私へ耳を寄せるように指示すると、それに従うヴィルフリートの、それはそれは端正なお顔に――情け容赦ない右ストレートを頬へ浴びせた。


ごっ、という鈍い感触が拳に伝わり、殴られてどしゃりと倒れこむヴィルフリートを、悲鳴じみた声で呼ぶエスティディアル。

私はポケットをまさぐってルシさんから貰った変な石を取り出すと、助け起こそうと駆け寄ってきたエスティディアルの足元へ投げつけた。

「きゃ……!?」

彼女の足元で石が砕け、辺り一帯に青白い炎が出現して床を舐める。

炎から身を守るようにエスティディアルが顔を覆い、数歩下がって狼狽した様子を見せる。

「これは……聖水!? 炎が上がるほどの純度の高い聖水を魔界で作るなんて……!」

エスティディアルがかなり驚いているけど、これ私が作ったものじゃないから。

いや、ほんとルシさんありがとう。なんか驚いているみたいだよ……。

無事に城へ帰ったら、ちゃんとお礼言うね。

――あ。それどころじゃなかった。
「痛ってぇ……。口の中が切れたぜ」
「ああそう。奇遇ね、私もキレてるわよ!」

頬を押さえ、恨みがましく私を見やるヴィルフリートに『バカ、優柔不断! 聖水飲ませるわよ!』と文句をまくし立てつつ、起き上がろうとするヴィルフリートを押さえ込み、両手で彼の顔を挟むと私の方へと向けた。至近距離で睨みつけてくる私の事を、ヴィルフリートも無言で見つめ返す。

「ヴィルフリート……あなた、本当はどうしたいわけ?
彼女は……あなたじゃなければ男は嫌だそうよ。私は、ヴィルフリートが居なくちゃ本当の意味で生きていけない。
だけど、そんな生きるとか死ぬとかを引き合いに出して引きとめようとか考えてないわ。
もう二度と聞かないからちゃんと答えて。あなたの本当の意思を教えて。
自分を愛してくれる事を望んで、側にいても頭脳・外見遜色ない方を選ぶなら、間違いなく……私よりエスティディアル。
私は……特に、ヴィルフリートに対して望むことはしてあげられないもの。
エスティディアルのほうに本当に行きたいなら、止めない。
みんなにも……ちゃんと話すし、私もお城から出ていくから心配要らない。だから……」

自分で決めてよ、って終わろうとするはずだったのに、私の心はそれを許してはくれなかった。

「――……自分、で……」

言葉より感情が先に出てしまいそうなのを押し留めて、最後まで冷静に話し終えたかったけど――できなかった。

じわりと滲んだ涙は、もう止められなかった。

「おい、ルカ……」

急に泣きだした私に驚き、涙を拭おうと手を伸ばすヴィルフリート。

泣き顔を見られたくないのと、胸にこみ上げる複雑な気持ちが後押しして、私はヴィルフリートの頬を押さえていた手を彼の首に回して、抱きつく。

「――私だって、ヴィルフリートがとっても好き! なんで、大事にしてるモノを人にあげなくちゃいけないの?!
誰にもあげないって言ったじゃない……。なのに、あんたは大丈夫とか言った側からフラフラしちゃってみっともない!」

面目ない、と呻くように謝るヴィルフリートだったけど、私は許さないと口にする。

「あんたの謝罪なんか、ルシさんの反省に比べたら塵以下でしかないのよっ……!
いい? もうあんたみたいな悪魔、他の人に任せたら迷惑しかかけないから、私が引き取るっていう貧乏クジを引き受けてやるって言ってるのよ! 観念しなさい!」

私からヴィルフリートの表情は見えなかったけど、私の腰にするりと手を回して引き寄せてくる。

彼の身体が小刻みに震えているのを、腕の下から感じるけど……。

「塵以下は聞き捨てならねぇが、俺が好きで独占したくてしょうがないなら、もっと早く言えよ。
おかげ様で、聞きたいセリフが聞けたから、俺としてはこれ以上芝居をしなくてもいいわけだが」

俺との子供は何人欲しいんだ、とかお尻を撫でながら意味が分からないことを聞いてくるヴィルフリートは、ようやく顔を上げた。

また、いつもの笑みを向けているけど、その顔には……悪戯を喜ぶ色も含められている。

「……あんた、この大事なときに私を騙した?」
「騙したとは人聞きが悪いな。悪魔の常識を人間に使っただけだ。だが、お前から離れたくないのは本心だぜ?」
…………。

にこにこと悪びれもなく言ってくれたが、私の後ろでは漸く聖水の炎が鎮火したらしい。

エスティディアルが私達の様子を見て小さな悲鳴を上げた。

「ヴィルから離れなさいよっ……! ヴィル! あなたも――」
「――さっきから、ヴィル、ヴィルってうっさいなぁ。なんで色事にしか興味ないわけ?」

私の怒りに満ちた声に何かを感じ取ったらしい。ヴィルフリートとエスティディアルが息を呑んだ。

「昔の男とヨリを戻そうって思うのは結構だけどね。あんた、自分のことしか考えてないでしょ。
ヴィルフリートがどんな奴なのか、知ってるって言うけど……私も数ヶ月毎日一緒に居たから知ってるよ。
この色ボケの好きな食べ物とか、どんなエッチが好きなのか、実は甘えたがってることや、心配性で嫉妬深いことだってわかってるんだから……!」
「……ルカ、お前っ……! 変なこと言うな!」
「私をこれ以上怒らせたくなかったら黙ってな」

何言われるかわからないわよ、と囁くと、ぐっと言葉を飲み込んだヴィルフリート。

よしよし、いい子ね。

なんだかショックを受けているエスティディアルに、あなたはどうなのよ、と尋ねてみた。

「これから、やり直そうとしていたんでしょ?
まさか、人間の願いを叶える仕事が無いから恋愛もうまくいく――とか、安易に考えてる?
……人間の欲を叶えるのは、得意不得意があっても悪魔なら誰だって……割と簡単に出来るわけでしょ?
仕事が理由でうまくいかなくなったのが別れる原因じゃないと――」
「貴女みたいな人間に、何がわかるのよ!?
愛して欲しいと思っても、ヴィルは連絡一つしてくれない。
こちらから連絡しても、当り障りのない会話ばかり。当分帰る予定もないから、まだまだ会えないなって――恋人にさらっと言われる気分、貴女にはわかるの!?」

エスティディアルも逆ギレして、私にお前にはわかるのかと訊いてくる。

「――ごめん、私には貴女の気持ちなんてわからない」
「だったら勝手なことを、分かったような顔で言わないで……!」

人間風情が、と口に出したエスティディアル。どうやら、とっても彼女の中では人間の評価が低いみたいだ。

「あなたのことは分からないけど……ヴィルフリートのことなら分かるよ。
だって、ヴィルフリートは……仕事で忙しいとか、離れていたら徐々に愛情が無くなっていくような人じゃないもの」
「いい加減なことを……!貴女のような数ヶ月しか一緒に居ない人間に――」

彼のことなら分かるなんてあっさり口にする私の事が、エスティディアルにはたいそう不快だったらしく、言葉の端々にも怒りの片鱗を隠そうとしなくなった。

「わかるわよ!! ヴィルフリートは、私に酷いことをしたけど……その後、十分すぎるくらいに大事にしてくれてる!
大喧嘩しても手を上げたりしないし、私が……もう一人の従者を可愛がっても、居候が増えても、傷つける意地悪なんてしない。
そんな人だから昔、あなたと付き合ってたヴィルフリートは……あなたの一言を待っていただけなんだと思うよ」
『会いたい』と一言いってくれたら……きっと、ヴィルフリートは忙しくても会いに来たんじゃないかと思う。

300年前は、もっと感情の表現が控えめだった彼は、フラれて、女の子に走って忘れようとして……本当に悲しかったんじゃないのかな。

「あなたは、愛して欲しかった。だけど、ヴィルフリートも……そうだったのかもしれないよ。
今、私も……判ったから」

一方通行の愛情は、やっぱり寂しくなるんだって。

「……もう少し早くそれをあなたが気づいて、私に申し出をしていたら……私はきっとヴィルフリートを手放していたよ」

その頃は、私がヴィルフリートを嫌っていたから。

喋りすぎたかな、とヴィルフリートの方を向けば……珍しく拗ねたような顔で『もう知らん』と口を尖らせている。

「今、は……?」

エスティディアルが哀しげに、私の言葉を待っていた。

「――もう、ヴィルフリートは……私の大切な人だから、身を引くことは出来ないよ。ごめんね」
「貴女を殺して奪う……といっても?」
「私は簡単に死なないし、殺すつもりならヴィルフリートを盾にするから……一緒に死ぬことになると思う。
万が一、私だけが死んだら……もう一人のヤバい従者が、あなたとヴィルフリートを間違いなく殺しに来るよ」

ルシさんが狂ったように笑いながら、銃器をフル稼働させる姿だけは……見てきたように分かるから……。

「言っとくけど、多分うちの従者が本気になったら……あなたでも勝てないと思うの。ハッタリじゃなくて……ほんとに」

魔王様の為を思って言ってるのに、彼女はヴィルフリートを見つめていた。

「主人の言うことはマジだぜ。あの時殺していれば良かったと思うほど、最近力をつけてきたしな。
その聖水以上の効力を持つ銃で撃たれたくなけりゃ、諦めてくれ」
「聖水以上の……って、まさか、以前やってきた……あの神に最も近きセラフ、ルシエルが……従者だっていうの?」
「ああ」

ヴィルフリートですら首を振って、肯定の意を表すと……エスティディアルは本当に哀しげに目を閉じて、うな垂れた。

「……ただの人間じゃ、なかったというわけね……」
「俺と天使の主人として、結構噂は巷にあったようだが……お前には届いてなかったのか?」
「セラフとクルースニクが人間に協力している、という噂は聞いたことがあったのよ……」

はぁ? と気の抜けた返事をしたヴィルフリートは、クライヴの事ならそれもルカが関わってるぜ、と笑いながら言い……またエスティディアルは絶句する。

「なっ……!? じゃ、じゃあ……この子、セラフとあなた、クルースニクを従えてるの!?」

クライヴさんは従者じゃないよ、と言おうとした私の口を掌で抑え、ヴィルフリートは『そうだ』と言い切ってしまった。

「……そんな、稀有な才能があったなんて……どんな手を使ったのよ……」
「この身体じゃないか? 天使でさえも色欲に溺れるくらいだからな」

こら、変なことを言うな。ていうか説明しながら胸を揉むなっ!

だが、エスティディアルはその場にがくりと崩れ落ち、戦意を喪失してしまった……かのように、見える。

なんだか色々誤解を招いている気もするけれど。

「……もう、帰っていい?」
「…………好きにしたらいいじゃない。もう止めないわよ」

あら。あっさり。

でも良かった、無傷で帰ることができそう……!

ほっと胸を撫で下ろした私の横から離れ、ヴィルフリートはエスティディアルの前に立って、悲しそうでもある笑顔を見せた。

「……じゃあな、エスティ。
俺は、お前のこと……昔は愛していたぜ。ルカの言ったことも、だいたい本当だ。
会いたいと思っていたが、お前はそう言わなかった。
俺だけがそう思っていたのだと……それでは、エスティの重荷になると思っていた。
だから――別れ話も、お前の事を考えて了承した」

それを聞いたエスティディアルは、バッと顔を上げてヴィルフリートを睨みつける。

だが、その表情はだんだん弱いものになって……ついには、泣き顔に歪められてしまった。

「――なんでよ……! 遅すぎよ……!」
「話が済んじまった今、時効だからだ……じゃぁな、俺に負けないくらいにいい男探してくれ。難しいだろうが」

この期に及んでそれか、ヴィルフリート……。もう少し気の利いたセリフはないのかな……。

しかし……ルシさんもクライヴさんも、なかなか有名人だったんだね……。

そして神に近い者、って……ルシさんはそんなにすごい天使だったんだ……!!

ああ、どうしよう……。そんな呼び声高い人に対して、昼夜関係なくあんなコトやこんなコトをして、性癖だけでなく人格まで歪ませてしまった……! 今度、こっそり懺悔しよう……。

「じゃ、帰ろうぜ、ルカ。もう俺は我慢ができないんだよ」

人の気も知らず、踵を返して私に向けられている笑顔は――とても嬉しそうなので、怒るのはやめておいた。

「お腹すいたの?」
「まぁ、朝からロクに食ってないからな……じゃねぇよ。好きだって言われて、俺がじっとしていられると思うのか?」

げっ。そういえば勢いで言ってしまった気がする。ああ、だからさっき子供が何人欲しいとか……言ってたんだ!

「ち、違いますし。好きはみんな平等ですし」
「平等だろうが『好き』なんだろ? だから、早く孕んでもらわないと困る。ルシエルにこれ以上先を越されちゃまずい」

私の身体に触れようと手を伸ばすのでそれを素早く避けたけれど、ヴィルフリートの表情は変わらない。

「嘘だっていうなら、身体に訊いてみるから構わないぜ。まぁ、セックスの最中に聞けばいいだけだが」
「や、やめてよ、変態!」
「その変態に犯されて喜んでる主人はもっと変態だろ」

さ、さっきから厭らしい言葉ばっかり……! 注意しようとすると、エスティディアルのほうが怒りだした。

「いい加減に帰るなら帰ってよ! まだ人の気持ちを傷つけて楽しいの!?」
「あ、ああ……悪リィな、エスティ! じゃあ!」

私をひょいと抱きあげて、文字通り逃げるようにその場を走り去っていくヴィルフリート。

エスティディアル、ごめんね……。バカな主人と従者でほんとごめん。

……でも、私……ヴィルフリートの事好きだよ。

ただ、やっぱり……ルシさんの事も同じだけ好き。

ヴィルフリートは気にしてないみたいに言ってくれるけど、やっぱり私……何かおかしいのかな。

そして何より、ヴィルフリートに好きなんて言ったとルシさんに知れたら、ルシさん倒れちゃったりしないだろうか……。

「……事故だから、ノーカンだよね」
「事故は示談で解決するもんだからな……だが、起こったことは事実、なわけだから認めるんだろ?」
「…………」
「俺は嬉しいぜ。嘘では言わないと誓ってた奴が、そう言ってくれたんだからな」

黙りこくって貝のように口を閉ざした私の事を見て、フッと笑ったヴィルフリートは……それはそれは上機嫌で。

彼の足取りは軽く、私の心はちょっとだけ重く……魔王の城を抜けて、帰還していったのだった。



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