ルカさん、と私を呼ぶ声が聞こえた――気がした。
あれ……?
私は、何しようとしてたんだっけ……。
変だ……。ぼやけて思い出せない。
確か、ルシさんに……何かしようと……?
靄が掛かったようにぼうっとした頭は、私に何かを考えさせるほどの力を与えてくれない。
「ルカさん……!!」ルシさんが必死に私を呼ぶ。
『悪しき力に負けないでください!』とか言ってるんだけど……悪しき力っていうか、ルシさんを……どうしようって、思ったの……?ニーナの声が、私に指示を与えてくれた。
そうか。ルシさんを、気持ちよくしてあげればいいんだ……。
いけませんと言ったルシさんだったが、近づいた私がルシさんの顔に手を置くと、その瞬間身体を大きく震わせた。
顔も熱っぽいし、しっとりと汗までかいている。
「ルシさんの身体……あったかいよ。熱いくらい。そっとルシさんの手を取って、服の上から自分の胸へと導いた。
指先が胸に触れた瞬間、ルシさんが弾かれたように素早く手を引っ込める。
「やめてください……! あなたのような女性が、こんな事をしてはいけません!」なんとしても拒否しようとするルシさんの首へわざと抱きついて、じっと紫色の瞳を見つめる。
「ぅ……」お互いの視線が絡みつく。
ああ、私にはわかる。
天使という清い属性のルシさんでさえ、今では情欲をくすぶらせているんだ、って。
私がにこりと微笑むと、いけません、とか言ってたルシさんの勢いは急に無くなり、私から目を逸らした。
ルシさんのほっそりした顎をつかんで私の方へ無理矢理向かせると、嫌がる天使の唇へ、強引に奪うようなキスをした。
ルシさんの体が大きく跳ねた。
私の身体を退かそうと力を入れるのに、ちょっと舌を口の中に入れただけで、その力は緩んでしまう。
「んふ……っ、ルシ、エル……」名前を呼ばれるっていうのは、天使でも効果的なようだ。
ルシエルと呼び捨てただけで、ルシさんは今まで一度も感じたことのない情欲に身を震わせる。
しかも、それを我慢してまで私を諭そうと努力し、またすぐに訪れた刺激に身を震わせる。
「ルシさん可愛い……もっと、見せてほしいな……」ルシさんの唇をむさぼるように深く口づけて、口腔に溜まる唾液を啜るように嚥下する。
「んくっ……やめ……やめなさい、そんな汚らわしい事――!」人の唾液を飲み込むことに抵抗感のあるらしいルシさんは、私がそうすることに非難した。
「ん……平気。ルシさんは汚くないよ。だって、天使は聖なる存在なんでしょう?しかし、逆に尋ねて切り替えしてみると、彼は口ごもってはっきりとは言わなかった。
まぁね、知らない人の唾なんて、生理的に嫌なのはわかるよ。汚いって思っちゃうのもしょうがないし。
でも――今の私はなんだか全然平気。汚いとは思わなかった。それに……キスだけでも身体がゾクゾクするし、もっとルシさんが欲しい……。
「ねぇルシさん、私のおっぱい見る? そこそこ大きい方なんだよ……。男の人って、胸の大きい人が好きなんでしょう?」自分で言うのもなんだか恥ずかしいけど、人よりちょっと大きい感じはある。まぁ、これくらい珍しい訳じゃないし、普通にいるんだけどね……。
ルシさんの返事を待たず、私は着ていたシャツに手をかけた。ボタンを上から順番に外していき、脱ぎ捨てる。
レースをふんだんに使った白いブラのホックを外して胸を露出させると……
ルシさんは見てはいけないものを見たような顔をして目を逸らす。
「あれ? ルシさん、こういうのに免疫がない人?天国って、洋服着てても白いものしか着ないイメージだし、聖書なんかじゃアダムもイブも実を食べる前までは裸だったしね。
「てっ、天界では……確かに胸を隠す人もいたりいなかったりですし、こんなふうに迫る人もいませんでしたから……」なるほど? つまりは、厭らしい目的でおっぱいを見せられると過剰に反応しちゃうってことなのね。
現に、ルシさんは顔を赤らめて目をぎゅっと閉じている。
「胸、触っていいよ。乳首を吸ってもいいの。ルシさんの好きなようにしてみて……?」愛想良く笑ったつもりだったんだけど、ルシさんにはそうは見えなかったみたい。
「ルカさん……こんなに厭らしい顔をして淫靡な事をねだるなんて……。おのれ、淫魔め……!ルシさんがニーナへと吼えるのだが、彼女は涼しい顔のままだ。
「ふふ……そう仰るなら、天使様のお力で元に戻してあげたらいいんじゃなぁい?くすくす笑うニーナと、歯を食いしばって怒りに震えるルシさん。
なんだかよく分からないけど、ルシさんの力では、出来ないことみたいだ。
眉をつり上げているルシさんも、なかなか素敵だ。
そんなルシさんの肩に手を置くと、やはり彼は過剰な反応を返して息を呑んだ。
「可愛いなぁ、ルシさんったら……ますます、苛めたくなっちゃうかも……」もっと、我慢してることを解放して欲しいな。
ルシさんの手を握り、女の人みたいに綺麗な指先をぺろりと舐める。
それだけで、彼は小さく呻くような声を出した。
細くて長い指を、私の胸に誘って握らせるように押しつけてみると、ルシさんは必死に手を離そうとするので、首に抱きついて胸を顔に押しつけてやった。
「天使だって、男の人なんだし……こういうの興味あるんでしょ? 我慢しなくていいのに」ぐりぐりと顔に押しつけ、懸命に拒み続けるルシさんを見て楽しむ。なかなか強情なんだよねぇ。
「ルカさん……こんな事を貴女が望んでいるとは思えません……! どうか、正気に戻っ――うぅっ……!」がんばって説得を続けようとするルシさんの首筋へ唇を押し当てると、軽く吸いついてみるだけで反応が返ってくる。
「う……っ……は、あ……ぁっ」ちゅう、と強く吸いながら舌を這わせると、ルシさんは私の肩に手を置き、いやいやと首を振りつつ羽根も小刻みに震わせた。
なんだか、こんなに感じちゃって女の子みたい……。
「気持ちいいの?」そう嘆願してくるルシさんの目が潤んでいるのは、熱情によるものなのか、それとも本当に悲しいのか……両方だとしても、私はやめるつもりもない。
「それでいいじゃない。ルシさんは、私と一緒に汚れちゃえばいいんだよ……」悲しそうな顔をするルシさんに、私は身を寄せて耳元で囁く。
「だって、ルシさんはひどいよ。私を信じてくれなくて、殺そうとも思っていたのに……それ以上、何も言えなくなってしまったようで、唇を引き結んで悔恨の表情を作っている。
「だから、ルシさんには私を傷つけたことを償ってもらうね……しょうがないでしょ? 信じてくれなかった、ルシさんのせいだよ。ルシさんの首筋にキスマークを幾つもつけながら、彼の祭服のボタンを外していく。
この服、いっぱいボタンついていて面倒くさいなあ……。
……ん? ルシさんの身体から漂う香り、知ってる。上半身をはだけさせてみると、彼の色白の身体には――まだ新しめの傷跡がついている。
傷ばかりではなくて、内出血して青くなっているものまで含めると結構多い。
そして、ルシさんの腕には、幾つもの革ベルトがついていた。
そういえば、コレ服にも付いてたなぁ。
……まぁ、どうでもいいか。エッチするのにアソコについてなければ関係ないし。でも、邪魔だから取っちゃおう。そう思って、ベルトを引っ張ると……慌てたニーナが大きな声を出してそれを止める。
「ルカちゃん! それは外さないで……拘束具なのよ!じゃあ、外さないでおこう。
「……あれぇ? ルシさん、自分ではずせないの?」ふーん。じゃあ、今は弱体化してるんだ……。
「期待したような顔しても、外さないからね?」あ、そんなこと言っても目に見えてがっかりしてる。
「……なんだかルシさんの身体、お風呂入ったばっかりだからかな。いい匂いがするね……。シミ一つ無い(まぁ怪我してるけど)、綺麗な白い肌。
「ルカさんだって、いい匂いはしま――ぁ……っ!」胸元に優しくキスを落としてあげると、ルシさんは泣きそうな顔をしてそれを見つめていた。
「……ルカさん……!」ちゅ、と乳首を口に含んで軽く吸うと、可愛い声をあげながら私の顔に手を置いた。
「ル……カ、さんっ……!」そろそろ、ルシさんの理性は限界なのかな。
そっとルシさんの下半身に手を伸ばすと――ああ。やっぱり、すごく熱くてビンビンに勃ってる。
「……もう、我慢できない? じゃあ、ちょっと舐めてからね」祭服のボタンを全部取るのは面倒だったから、途中まで外したまま放置して、ベルトを外してズボンの前を開けた。
「……ルシさん、先っぽが濡れてるよ……。欲しくてしょうがないんだね……」美味しそうなルシさんのアレを口に含んで、舌でゆっくり下から上に撫であげる。
「う、ああぁっ……! ルカさん、それはっ……」とても気持ちいいらしい。さっきと比べると拒絶も微弱になってきたし、後一押しだろうか。
指で剛直をしごきつつ、舌での愛撫を続けていると、ルシさんの声にだんだん余裕が無くなってきているのが分かる。
「はっ……、いや、です……! ふぁっ……、ルカさ……ルカさんっ……! どうか、も……やめ……!」行為の最中みたいな荒い息づかいがはっきり聞こえてくる。
ルシさんの艶めかしい喘ぎ声は、私の下腹部に熱く届いて、こっちまで切なくなってきた。
口の中ではルシさんのモノがびくびくと強く脈打っていて、もうちょっと続けたらイッてしまいそう……。
舌をもっと絡ませて、激しくしようと思ったそばから、急にルシさんの手が私の頭を掴んで上下に激しく揺する。
「ん、んっ……?!」イヤだ、と言いながら、ルシさんは乱暴に私の喉に突き入れてくる。
「んぶっ……! ルシひゃ……んぅ……!」ルシさんは懺悔の言葉の途中で、絶頂に達してしまった。
その証拠に、私の口内でルシさんが大きく震えながら――どろりとした体液を吐き出す。
「ん……く、んっ……!」喉に焼け付くような苦みと青臭さが、口に広がる。
ルシさんはといえば、目元を腕で隠しているからどんな顔をしているのかまでは見えない。
だけど、白い肌を桜色に染め、身体を仰け反らせて唇から熱い息を吐くルシさんは……この境遇とあらがえなかった事に後悔しながらも、今まで一度も味わったことのない快楽に身を委ねているようだ。
「ん……ルシさんの、量が多くて苦いね……」それをごくりと飲み込んでから感想を告げ、まだ勢いを失わないルシさんのモノを綺麗に舐めてやりつつ、自分の穿いてるパンツのボタンを開けて、引き下ろす。
「っ……ルカさん……」自分の履いている下着の右紐をゆっくり外すと、左側も引っ張って結び目を解いた。