【魔界で従者を手に入れました/4話】

身体が動かないので、何されても振りほどくことができない。

その間にも、私の胸に触れていた男の手には徐々に違う力と動きが加わっていく。

ゆっくり捏ねるような、揉むような動きになって……服の中へ反対の手が滑りこんだ。

――こらっ、ちょっと、やだったら!

動けッ、動け! 私の身体なんだから動きなさいよーー!!


これがロボットアニメだったら間違いなく私の力とかロボの秘めたる力は解放されてるはずなんだ。

でも、どんなに叫ぼうとしても声は出ず、身動き一つ叶わない。

男の唇が、私の唇に重ねられようとしている。

ちょっと待って! やめてっ!

せめてファーストキスだけは好きな人としたいなっていう乙女の願望が――……


……あったのだけれど、願い虚しく知らない人外の唇の感触。

初めての味はレモンだとかイチゴだとかスイカだとかなんかいろいろ聞いたけど、私のファーストインパクトは……って考えてるうちに、舌が入ってくる!!

ぬるりとしてて、でも滑らかで……味がどうとかいうより――なんだろ。

すっごく嫌で嫌でしょうがないんだけど、頭が熱くて痺れるような感じ。


気持ちいいとか全然そういうモノじゃない。でも、なんか変な……抗えない感覚……。

口内を舌で蹂躙されるがままだから、息が苦しい。

空気を求めてどうにか楽にしたいのに、身体の表情一つ動かないままだから、私酸欠で死ぬんじゃないかな。


「……おっと。苦しいか」

男が気づいたらしく、唇を離す。唾液をたっぷり絡め含んだ舌が離れて、銀の糸を引いた。

――こんなの、嫌ぁ……。なんで、私知らない男にこんな厭らしい事されてるままなの?

服は乱され、気づかないうちにブラのホックまで外されている。

「ふぅん、着やせするタイプか……」

妙なところで感心している男は、私の胸に直で触れつつ、その唇を寄せて舌で乳房全体を舐め上げた。下から上に、外側から中央に。

それだけでぴりぴりと体中に甘い痺れが走って、私は戸惑いを覚える。

こんなことされるのは当然初めてだし、心理的には嫌悪に近い。

身体が自由になったなら、今すぐ全力で抵抗するところだ。


だけど、この感覚は……嫌でたまらないけど、じゃあ心の全部が嫌なのかと言われると……そうでもない。


それについては、私自身自分の気持ちがどうなっているのか整理がつかないままだから、それも相まって戸惑いを感じているところなんだけど……。

それは多分、この男が乱暴な触り方をしなかったりするからか……


……いや、イケメンだからってのもあるな。


いや! 違う! たとえイケメンでも、これは犯罪であることに変わりはないはず!! だまされちゃだめなんだよ!


……異世界にも、うちの世界の法律に似たような項目があれば、なんだけど。

ちゅっと音を立てて乳首を吸い、舌を這わせる男の人。

時折私をその赤い瞳を向けて盗み見るんだけど、明らかに楽しくなさそうだ。


「……なあ、そろそろ術を解除してくれないか? 表情も変わらないし声も出ないんじゃ楽しめないぜ」
「ああ、そうでした? てっきり、出来れば何でもいいのかと……」

そんな物好きじゃねえよ、と男の人は文句を言っているのだが、こうされている私からしてみれば、物好きだとかそうじゃないとかいう次元の話じゃねっつの!! ボケェ!


そして――するっ、という感じで身体の余分な力が抜けた。

ついでに、あ、という間抜けな音が私の口から零れた。


もしやこれは……身体が自由になった証拠だ!!

人の身体にベタベタ触っている男に掴みかかってビンタでも食らわそうとしたら、レディが私を羽交い絞めにしたままだったので、その行動は実行不可だった。

「ちょっと! 私の許可なくそんな事しないでよッ! 絶対あんたに味見だか何だかされるのは嫌なんだから!」

目の前の男に怒鳴り散らすのだが、私の本気を意に介さず『あ、そう』と流して再び行為に没頭する。

「あっ……嫌、だってば……! ひぅっ……!」

男が私の身体に触れ、唇で愛撫するたびに口から勝手に変な声が漏れた。

嫌だって思っているのに、身体が大きく跳ね上がった。

「嫌、お願いだから、やめ――ッ、くふっ……あ、あっ?!」

しかも、もう男の手はスカートの中にまで侵入し、つつ、と指先をゆっくり滑らせて下着に到達すると……下着の上から私の大事なところに触れる。

そのまま、割れ目をついっと撫でてから、下着を引き下ろすと指を一本軽く埋没させてきた。

「ふぁっ……!! い、やあッ!」

あまりのショックと嫌悪感に、涙が出てきて……それなのに、私は男から与えられる刺激に自分の意志とは関係なく身体を逸らす。


本当にこれは何かおかしくて……恥ずかしいことを言うと、自分でここを触っても、こんな快感を得たことはない。


この男のせいなのか、私が恐ろしさでどうかなっちゃってるのか、それすらも判断できない。

ぬちゃぬちゃと粘着質のある水音を響かせる秘部を指先で時折激しく掻き乱されるたび、私は悲鳴じみた嬌声を上げた。

びくびくと身体を震わせ、あられもない声を出し続ける私の反応に、男は満足そうに目を細める。



「なかなかいい声で喘ぐじゃないか……もうこれだけ濡らせば十分だな」

指を引き抜き、どろどろになった指先を美味しそうに舐め上げて……男はベルトのバックルに手を掛ける。

「ちょっ……、なにし、て……!」

なにって、と男はそれこそ不思議そうに返してから――至極愉しげに、ニッと笑った。

「一緒に愉しむ準備に決まってるだろ? 大丈夫だ、人間は久しぶりだが……痛くはないだろう」
「絶対嫌だっ! 私しょ――」
「はいはい、お静かにね? 折角の楽しみを罵声で台無しにしないでちょうだい」

処女だからと続けようとした私の口を、レディの手が塞ぐ。


この人、なんで絶妙のタイミングっていうくらい余計なことをするのぉぉ……!?


口を塞がれてしまったから捲し立てようとも、くぐもった音しか出ない。

手の間から、モフーッ、モフーッという情けない私の荒い呼吸音が漏れるだけだ。


「おぉ……なかなかどうして。綺麗なもんだな」

足を思いっきり開かされて、一番隠しておきたい部分が露わになる。


やだ、知らない男の人に、恥ずかしい場所をじっと見られてる!!


視られているどころか、くぱぁと開かれてじろじろべたべた触られているじゃない……!

嫌だ! こんなことされるなんてもう死んでしまいたい……。


――いや、待て待て。死ぬ前にこの男を蹴り飛ばしておこう。足は自由だ。

アソコに顔を近づけ、吐息が届く範囲で肉芽に刺激を与え続けている男の顔を……


陸上で鍛えた黄金の膝で蹴ろうと試みたものの……太ももの内側にいたので、私が振り上げた足は、男の顔をもっと内側に導くことになった。

「指じゃ足りなかったんだな。まぁ、焦らされるのも身体には悪いか……」

何を勘違いしたのか、私が誘っているモンだと思ったらしい。男は唇で陰核を吸い上げる。

「ん……! んぅうっーー!」

新たな刺激が私を襲って、余計なことをしてしまったと後悔する。

じゅっ、と内側から熱くなる感覚があって。悲鳴を押し殺すのがやっとだった。

もう身体が与えられる快感に酔ってしまって動かない。


男のなすがままになって抵抗できない私は――考えることも放棄しかけてしまった。


すると。

「――では、いただきますか」
――何、を?

その言葉にぼうっとしたままでとろんとした目を向け……視覚映像からの伝達刺激により、急いで意識を叩き起こす。


その男は……恐ろしいほどそそり立った……というか、いきり立ったというか、つまりもう上を向いてなんか準備オッケーみたいになってる自分のアレを、私の入口にぴたりとくっつけて、自分のモノ全体へ、私から溢れでている蜜をこすり付けていた。


ぞくり、と、快感ではないものが背筋を走り抜ける。今回は当然、恐怖のほうだ。

「んー! んー!」

ぶんぶん首を横に振って、猛烈な拒否を示しているものの。

男にも、レディにも全然分かってもらえなかった。

いや、多少はわかってはいるんだけど――それはそれでいい、みたいな反応だ。


「力抜いとけ。そういうのが好きなら止めたりしないが」

どれも好きじゃないよっ!! とも、やめてくださいお願いします、とも言えず。

たとえ、言ったところで『んー!』と、言葉の意味が全く分からないものに変換されてしまうだけだ。

男の手が私の腰を掴んだ。許してという意味合いの悲鳴を上げる私を無視して――

……そのまま、ぐっ、と奥まで一気に挿れてくる!!

「…………んーーッ!!」

みぢ、と、身体の中から音がして……瞬時に広がった激痛。

しかも痛いなんてものじゃなくて。身体が、というか繋がってるところが酷く痛む。

「っ、キツ……いな……!」

男が言葉を上ずらせながらそう言ってるけど、その『キツい』ところのもっと奥へと押し込もうとする動きをやめようとはしてくれない。

一突き一突きは、ぎちぎちと音を立ててるような感触で、私を貫いてくる。

ほんとに人間の体の一部が入ってしまっているの?


別のもの……木の棒とか、鉄の串とかが入ってるんじゃないかって思うほど痛みと感覚に過敏になっていて、そうとも知らない男は私の身体を内側から激しく揺さぶってくる。

裂かれるかと思うほどに痛みと振動が響……いや、裂けてるっ、裂けちゃってるんだからっ!

「ん、ぅうー!」

私が苦しんでるのにお構いなしという感じで、自分のペースで抽送してくる。

――なんかすごく気持ちよさそうな顔してるんだけど、私は痛いっていうのに腹が立ってきた。

腹が立とうがなんであろうが、痛みは引かないし、塞がれている口はまだ解放される様子もない。

これ、強姦っていうよね。絶対そうだよね。

まさか自分が、そんな酷い目に遭うとは思ってなかった。

いや、みんな被害者はそう思っているには違いないんだ。

同じ女の子なら、無理やりされるような怖さとかは絶対わかってくれるはず……

なのに……私を連れてきたレディは、この男とグルになっているし。むしろ主犯格だ。実行犯はこの男。

「くッ……! そろそろ、一旦、出すぞ……!」

男の抽送がさらに早くなって、乱暴にガンガン突き上げてきた。

それに比例するかのように、私の痛みも増していく。

「――あっ、い、たぁいッ……! 抜い、てよっ……! は……あ、イっ、や、あ……!」

最後のほうはもう言葉にならなかった。

何時の間にか、口を押さえていた手はなくなっていたけど、それに気づく余裕はなく。

悲鳴を上げる前に、男の動きに合わせて言葉にならない単語だけが口から出ていくばかり。

「……おい。こいつ、魔界に来てから、精は?」
「ああ、誰のも受けておりませんわ」

男の質問に、私のおっぱいを揉みながら涼しい顔でレディが答えている。

「じゃ、中に出して問題ないな」
「ええ、どうぞ思う存分に」
「えっ……、や、だ……あぁッ! やだ、赤ちゃん、出来ちゃう……!
う、いや、いやですっ、いやああ!」

精がどうのって、そういうことだよね。避妊してくれないって事だよね!? 無責任すぎだよね!?

犯されてなおかつ妊娠までするかもしれない――そんな恐怖に、私は半狂乱になりながら抗った。

「――平気だって。出来たら出来たで何とかなる」
「ならな……ッ! いた、いっ……! こんなの、酷ッ……あぐッ……!」

何がどう平気なのかわからない。そりゃ、男の人はそれだけなのかもしれないけど!!

ズンズンとがむしゃらに突き上げ続けながら『出すぞ!』という言葉のすぐ後……動きを止めたかと思うと、男が私の身体を抱きしめるようにして、呻いた。

中に……なにか。どろどろとしたものが、溢れてくる……! これが、精液……!?


「い、やぁああーーーッ……!!」

耐えられなくなった。私の中に渦巻くこの気持ちをどう表現すれば伝わるかはわからない。

ただ、絶望とか、恨みとか、怒りとか、悲しみとか、自分自身に対する落ち度を責める声とか、そういうのも混じって……とにかく、いい事なんか何にもない。


「どう? 気持ち良かった?」

そんな私の後ろからぺろりと私の耳を舐め上げ、胸を揉みしだきながらようやく羽交い締めの手を離してくれるレディ。

――気持ち、いい? ですって?

「気持ちいいわけないでしょ!? 痛くて仕方なかったんだから! あんたたちなんか大っ嫌い!」

こんな時なのに涙こそ出なかったけど、私の『痛い』という切実な訴えは、行為に没頭していた男の意識を向けることには成功した――というより、自分でやること済ませて満足したから、みたいだけど。

私を訝しげに見て、首をひねりながらおかしい、と言い放った。

「……おかしい。

俺は悪魔だ。人間を、とかく異性をどうこうする(すべ)には事欠いてないどころか長けている。

なのに、この女は痛い痛いと恨み言しか言わない……」

男はぐっ、と最後に強く私の中に果てた(はず、だと私は思っている)モノをまた突き入れ、私に悲鳴を上げさせた後で……嫌なことを聞くが、と低い声で呟く。

しかも、彼にとっては考えたくないことだったのか……嘘だと言ってほしいという顔をしている。


「お前、処女……か?」

質問に、こくりと頷く。

マジかよ、と男は呟いてから、私の中に納まっているアレを引き抜く。

引き抜かれる時も痛みが走って、ウッと小さく呻いてしまった。


結合部と男のアレには――

今しがたこの男が出したばかりの精液と、私が処女だったって証の血が混ざったものがどろりと付着していた。


「……おい……冗談だろ……?」

そう言った男の顔に、焦りと……悪魔のくせに、絶望の色が混じっていた。



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