ベルクラフトの屋敷から、港に停泊している船へと戻ってきたカイン達。
数時間前までここに居たはずだが、まるで何日も留守にしていたような心持ちである。
我が家に戻ってきたかのような安心感から、皆が気を緩めるのが伝わってくる。
話し合いの前に、一旦休息を取ってからにしようというカインの提案に異を唱えるものはおらず、各人は別れた。
生存しているベルクラフトの二人――当主デルフィノと次男セルージョのことだが――は、彼らの一族が行なっていた研究に虚偽の報告や重大な危険性等が発生していることから、緊急措置として身柄を拘束し、ギルドへ引き渡すこととなった。
縛られて自由の利かない手足の代わりに体をくねらせ、芋虫のようにもがいていたセルージョを荷台に放り込み、屈強なギルド員に両脇から腕を掴まれていたデルフィノは猿轡を付けられ、魔術を使えないようにされている。
ラーズやカインの姿を認めると憤怒と恨みを込めて睨みつけながらすれ違い、連行されていく。
その間、ミュリエルはイルメラを庇ってくれたレティシスへ何度も礼を述べ、当のイルメラは心配そうに恩人を見上げていた。
数時間後、再びカイン達は船内の会議室に集まった。長机を囲むようにして配置された椅子にそれぞれ座る。
「シェリア、まだ無理しないほうがいいからな。辛かったらすぐ言えよ」まだ体調の優れないシェリアを気遣うレティシスへ、ありがとうと微笑む彼女もレティシスへ心配そうな目を向ける。
「レティシスのほうこそ、大変だったんだから無理しちゃだめだよ?」そう言いながら照れを隠すため大きく腕を振ってみせるレティシスに、隣のラーズは『傷口を治しただけですから無理は禁物ですよ』と注意する。
黒い女から攻撃を受けたレティシスは身体の至る所に火傷があったものの、先ほどの休憩時間を利用してラーズが治療にあたったため、ある程度は回復したようだ。
ラーズの言う『傷口を治した』とは、外皮……表面だけを治療した、ということであり、傷んだ部分は身体の治癒機能に任せる治療を施した。
自らの身体が快癒したと喜びを感じながら肩を回すレティシスに苦言を呈したのも、無理をすれば完治までの時間が長引くからである。
ラーズの内心を読み解いたわけでは無かったが、レティシスははたと動きを止めラーズのほうへ身体ごと向く。
「……今回の分も、俺の借金に加算される?」勿体ぶったように言いながら請求するつもりなど毛頭ないラーズは、ちらりとレティシスの反応を伺う。
隣の青年は、やや緊張した面持ちでラーズの言葉をじっと待っているようだった。
「そんなに心配なさらずとも、代金はいただかないので大丈夫ですよ」ホッとしたようなレティシスを見て、脅かしてしまったことを詫びつつ柔らかな笑みを浮かべるラーズ。
「……疲れてるのに傷、治してくれてありがとう」すると、レティシスもうんざりしたような顔をして、ついカインのほうを見てしまう。
相手も彼らを見ていたため、必然的にカインとレティシス二人の視線はかち合ってしまった。
「……なんでもないよ」そうは言うものの、カイン自身もこの話し合いは気が乗らない。
レティシスが辟易するのも理解できるし、なにより……レナードの返答次第では冷静でいられるかどうかすらわからない。
そのレナードはカインの左側、恭介とフィーアの間に座っている。
あの兜はつけていないため、その素顔がはっきりと視認できていた。
明るい金髪に、琥珀を思わせる瞳。それだけでも――十分『見知った色』であった。
だというのにカインは本人に直接聞くでもなくラーズへと顔を向け、この男は何者なのかと尋ねる。
ついにカインへ事実を伝える事になった。
ラーズは椅子に腰掛けたまま背筋をすっと伸ばし、呼吸を整える。
「……レナードというのは仮の名前です。驚きの声を上げたのは、カインではなくレティシスのほうだった。
目を丸くして、カイン、シェリア、リエルトを見比べている。
「全ッ然似てないだろ!?」似てると口を挟んだ瞬間、レティシス・カイン・レナードの三方から刃のような鋭い視線が突き刺さってきた。
慌てて言葉を濁しながら恭介はカップに入った熱い茶へ口をつける。
「……ラーズ伯父さんの仰ることは本当です」仲間の顔を見渡し……リエルトは未来で起きた事、目的、そして自身が何者であるかを話した上で、今まで隠し持っていた、もう一振りの光剣ウィアスを机上に置く。
「僕が肌身離さず持っていた、未来の……ウィアスです」カインは置かれたそれを細部まで眺め、暫く観察した後、手に取ってみる。
持つことの出来る者が限られているウィアスは、カインの手に収まっても何事も起きない。
鞘から抜き、輝く刀身に触れ……意識を集中するように目を閉じる。
すると、どうだろう。アルガレス王家の血に反応するのか……ウィアスは輝きを放ちはじめた。
「……確かに、これはオレの持っているウィアスと同じだ」目を細めていたリエルトは、ただ眩しさからそうしたのではなく、今自分とカインが対面している事に感じ入るものがあったせいだ。
ニコリとも笑わないカインが同じ気持ちでいるはずがないことは分かっている。
それでも、記憶の中の父とは違い、事実と向き合ってくれているのは無常の嬉しさがあった。
剣を元に戻して再び机へ置くと、カインは腕を組み『それで』とリエルトへ切り出す。
「貴様が何者か。なぜシェリアを狙ったのか。将来はどうなっていたのか……それは分かった。恭介が間を取りなそうとするも、カインは即座に切り捨てる。
リエルトはシェリアの方をちらりと見てから、確かに、と口を開いた。
「……彼女のことをもう恨んでいないかと訊かれると、頷くことは出来ません。淡々と答えるリエルト。未来から来た彼は18歳で、現在のカインと年齢も背格好もほぼ同じ程度。
「ふん。どうだか……」予想していたことではあるが、シェリアのことが絡み始めるとカインは自分を信じようとはしてくれない。
リエルトが知っているカインは激怒することも笑うこともなく、皇子としての責務をこなす、寡黙な男性だった。
たまに会っても自分を撫でてくれたかどうかは覚えていない。
それなのに、識っている父とは違う、と初めて思ったのは――ここにやってきて、ベルクラフトにシェリアを奪われたとき。
カインはリエルトを敵と認識し、激しい怒りと共にリエルトの喉へ指先を食い込ませてきた。
殺されてしまうかもしれなかったのに、カインの感情で変わる深い蒼の眼に見据えられてなお、その色が綺麗と、受け継ぎたかったと思ったのだ。
同年代の父は、姿こそ記憶の中の姿と大きく変わってはいないが、まるで別人といってもいいくらいに激しいものを内に秘める男性だった。
「信じて貰えないのも仕方ない……と思っています。だけど未来の彼女はとてつもなく凶悪だった。そう説明するリエルトですら、自分の言っていることに相違があることも分かっている。
シェリアがカインとフィーアを手にかけるときに見せた表情。
そして自ら『過去へ渡れば自分を殺せる』そう提案してきたのだから理性や感情を失ってはいなかったはずだ。
「――未来は、これで本当に変わったのでしょうか」リエルトの呟きに、恭介は茶を口に運ぶ動きを止めた。
「どういう意味だい?」カインがぽつりと漏らした言葉に、リエルトは怪訝そうな表情を浮かべる。
「手を伸ばせば触れる事が出来る。朝、自分が再び目覚める事が出来る。生きていること、大事な物が隣に在ること、願いが叶うことは当たり前の事ではない」そうしてシェリアを見るカインの瞳は寂しげで、シェリアはいたたまれないのか直視することが出来ずに目を伏せる。
「いるかいないかは大事……僕は、きっとそう思って貰えなかった。抗議しようと口を開いたフィーアを肘で軽く小突いて黙らせる恭介。
「……」カインは眉を寄せ、複雑そうな表情をした後……リエルトから顔を背ける。
それを見て、リエルトも悲しげに笑う。
「僕のことなど、何の興味も無かったのでしょうね」静かに、だが強めに発せられたシェリアの声。皆は一斉にシェリアを見つめ、彼女はその視線を受け、はにかんだ後リエルトに向けて言葉を投げかける。
「その……私が居なくなった未来って、カインが無事に魔王と話し合いを終えてアルガレスに帰ってこられた、と考えて良いんでしょう?悪態をつきながらも優雅に茶を飲むフィーアに動じた様子も無い。
「ま、美談としてキレイに纏めて下さったシェリア様には申し訳ないですが、多分未来のカイン様はシェリア様がいなくなって、抜け殻になったんだと思いますわ。肯定するでも否定するでもないカインは、そう告げた後……あの女のことだが、と話題を変える。
「館の中でオレ達の前に現れたとき『フィファーシュ』という名前を口にしていたのを覚えているか?」ラーズがそう答えると、カインは意味ありげにリエルトに貴様はどうだと尋ねた。
「……いえ、僕も覚えはありません」呆れたようになじるカイン。ぐっと堪えた様子のリエルトを見て、シェリアは眉を寄せながらカインの服の袖を引く。
「そんな言い方したらだめ」リエルトを庇おうとするシェリアに、当の本人であるリエルトはますます不服そうに唇を歪める。
「……確かに家系図は見ていない……というより、僕は貴方の隣に座っている女性との間に出来た婚外子なもので、王家として認められていても――自由にものを見ることはできませんでした。驚きを見せるシェリアと対照的に、フィーアのほうは半眼でそのやりとりを見つめている。
「うわ、嫌味っぽいところはそっくりそのまま受け継がれていますのね。レティシスも不憫そうに言ったが、無言で圧をかけてくるカインから視線を逸らす。
「その、フィファーシュという方はアルガレス王家に関係されていると?」ぴりぴりした雰囲気を和らげるように、ラーズの穏やかな声が割って入り、表情を曇らせながらカインもそうだと答える。
「……アルガレス王家がラエルテを祖とするのは周知だろう。すると、シェリアは何かに思い当たったらしく、知ってる、と口に出す。
「ティレシア王家のこと、本で読んだことある……。そうだ、とカインも頷き、シェリアの足下で丸くなっている羽猫を見つめる。
猫はシェリアの側を離れようとせず、時折フィーアや恭介に向かって『にゃあ』と鳴いて何かを伝えたがるそぶりを見せた。
その猫の正体が何であるかは、フィーア・レナード・恭介のみ知っており、カイン達にはただの珍しい猫という認識しか無い。
猫……いや、ルァン本人からカイン達に明かすことは謹んで欲しいと告げられている。
よって――穏やかに眠っているように見えながら、きちんとカインらの話に聞き耳を立てている。
「そんな話だったのですか。だから、ぼくはティレシア王家のものかと聞かれたんですね」恭介は長年の疑問に合点が行ったらしい。晴れやかな顔で頷くと、残念ながら僕は異世界の庶民ですよと笑う。
「それで……その王家は、滅んでしまったんでしょうか?」レティシスも多少自分の国の歴史は知っているらしい。自信ありげに答え、カインも無言で頷いた。
「こうしてアルガレス王家は、ラエルテの血を薄くして現状に至る。恭介がそう説明すると、珍しい話でも無いのだなとカインは相槌を打ち、再び話し始める。
「アルガレス側はその青年の話を信じない。なぜなら、ティレシア王家が滅んだのはもう数百年も昔のこと。カインはそこで言葉を切る。ルァンは薄眼でカインの様子を見上げた。
「……翌日、城から追い出された。一同が息を呑み、まさか、とラーズが口にする。
「そのアルガレス城に来た青年の名が……フィファーシュ……?」皆はカインの言葉を待つように息を潜め、カイン自身もまた、緊張しているかのように見える。
「黒い女……もしも生きていたとするならば大魔術師のアイオラ・ディーリ・ティレシアス。焦がれる野望と共に国を滅したティレシア王国最後の女王。腕を組んで話を聞いていたレティシスは迷いながらも口を開いた。
「アイオラの狙いは、アルガレスへの復讐だけじゃないと思う。ラーズはそこで言葉を切り、シェリアの方を見つめる。
「……アイオラ、父、ベルクラフトの一連の関係です。カインは苦しげに呻き、考えたくないものだ、と口にし、次に狙うのはどういった手段になるかと思案する。
ルドウェルはベルクラフトとの取引においてシェリアを引き渡し、恩を売り……そして一族の地盤をより強固なものにする。
それが目的だと思っていた。だが目標は何であるのか? そこが見えてこない。
ベルクラフト以外にシェリアを利用する価値があると知れば、次は直接自分たちの前に現れるかもしれない。
「父に直接目的を尋ねても、答えはしないでしょう。あるいは……肯定されて強硬手段に出ないとも限りません。しんと静まりかえる室内。一生懸命言葉を選んでいたレティシスだったが、ふとアイオラの持っていた壺のことを思い出す。
シェリアが自分の胸元を嫌そうな顔で見るので、レティシスは慌てて聞き間違えかもしれないとフォローを入れる。
「……そういった術は、アズクラなどで呪術として使っていると伺ったことがあります。フィーアとカインが納得したように頷き、ラーズも首肯する。
「あっ、魔族のネズミもほんと山ほど居たんだ。あれが死んだら液体に放り込んで濃度を増してたのかも」シェリアは自分の気が遠くなりそうな虚脱感に襲われ、思わず顔を覆ってしまった。その心中を察し、フィーアはシェリアを痛ましげに見つめる。
「……とにかく、なんかまあ……呪術がシェリアを生かしたっていうか……」想像で軽い頭痛を覚えたのか、額に手を当てて肯定するシェリアは複雑そうな表情を浮かべた。
今後どうなるかは冷静に考えていかねばならないことだ。それはシェリア自身も、他のメンバーもよく分かっている。
再び重くなりそうな空気を察知し、レティシスはカインへと新たに話を振った。
「それでさ、これからどうするんだ? アルガレスに報告とかもあるんだろ?」フィーアの諫めに、カインは苦々しい顔をする。
「父上も大臣も、よくあのような男を側に置いて国家証を渡したものだ。自分たちがあの男の傀儡になってしまってからでは――」呆れながら愚痴を零しかけたカインは、自らの言葉で国内に迫る真の恐怖を感じた。
それはラーズやシェリアも同じようで、二人ともカインのことを強張った表情で注視している。
「……カイン様……」ラーズでさえ、言葉が出てこない。シェリアは自身の口元を手で覆い、青い顔をしながら『ごめんなさい』と口にする。
旅立つ日に、父から渡された指輪は彼女を縛める道具だった。その絶望が、再び胸を締め付ける。
「……そんなことあるわけないって、もう父様を信じることが出来ない。シェリアの肩に手を置いて宥めるカインを見ながら、そこにいるリエルトは寂寥感を覚えた。
二人が話しているのは当然自分のことではなく、この時間に生きる赤子のリエルト。
カインが心を砕いているのも、自分ではなくこの時間で生きる赤子のリエルトと、シェリアのこと。
「今回のことも当てはまるか分かりませんが……確か僕と乳母は伯母オクタヴィアの実家に滞在し、二歳で伯父の家に引き取られたと聞いています。すると、ラーズはふと眼を細めてそうですかと微笑んだ。
「カリーナ達は貴方をいじめたりはしませんでしたか?」ふむ、とラーズは頷き、こつこつと指で机を叩いた。
「……リエルトの事は確かめなければいけません。わたしは妻に連絡を取ってみますが、カイン様は王の安全を確かめるべきでしょう。ラーズとフィーアはそうして立ち上がり、会議室はにわかに慌ただしくなる。
恭介は不安げなシェリアと複雑そうな面持ちのリエルトにかける言葉も無いまま、自分の瞼を押さえる。
今こそ過去や未来を見通す能力が発動してほしいものなのだが、本が焼失してから眼の疼きは無い。
自分の能力は消えてしまったのだろうか。本なら何でも良いわけではないのか。そう焦れたとき、ふともう一冊の【ルフティガルド戦争】の存在を思い出す。
「リエルト、そういえば君、肌身離さず持ってる日記があったね」そう小声で言ってカインのほうをちらちらと見るリエルト。それもそのはず、彼の大事な日記は現在のカインも書いている物だ。
「未来の日記ってなんだ? カインさんが関係してるのか?」レティシスが話に加わってきたが、急に名を出されたためカインが彼らの方を振り向く。
「日記? ……なんのことだ?」思わず顔を覆う恭介に、カインは不思議そうな顔をしたが……はっと気づいてリエルトを睨む。
「……見たのか」黙秘を貫こうとしたが、カインは許してくれなかった。
「答えろ」肯定すると、みるみるうちにカインの顔は怒りと羞恥で紅潮していく。
「返せ。今すぐ出せ」掌を突きつけられ、恐ろしい剣幕で怒鳴るカインにリエルトは渋々といった風に日記を取り出すと、カインはそれをひったくるようにして手中に収める。
レティシスも覗き込もうとするが、カインに手で追い払われてやむなく退散した。
「……間違いなくオレの字だ。書き始めの日も同じ。次々にページを捲っていくカインは端から見て分かるほどに狼狽えている。
そんなカインをシェリアは珍しそうな顔をして見上げていたが、恭介にこれが必要なのよね、と投げかける。
「あ……変わってるかどうかちゃんと見ないといけないから、もし貸して貰えたらじっくり見るけど……」予想通りの答えに苦笑する恭介だが、懐にしまおうとするカインへ、リエルトは声をかける。
「貴方が持っていても構いません……でも……処分だけはしないでください。すると、カインはしまいかけた日記をまじまじと見つめ、苦々しい表情で再びリエルトへ差し出す。
「オレが持つべきものではなかったようだ。すまない」差し出された日記を恐る恐る受け取ると、リエルトはじっとカインを見つめた。
眼差しに敵意は無かったが、ある種の迷いのようなものも感じられる。
「……日記を見たとき、どう思った」びくりとカインの身体が大きく震えたのを、その場にいた誰もが見ていた。
床に寝そべっていたはずのルァンも、いつの間にか机上にあがっていて、カインとリエルトのやりとりを見据えている。
「昔のことが――」「……やめろ。もういい。その話は誰にもするな」早口でカインは話を打ち切ると、フィーアの様子を見てくると逃げるように部屋を出て行った。
シェリアはリエルトに、どういうこと、と尋ねてみたが彼は言えないと首を横に振る。
恭介は首を傾げ、記憶にある書物の内容を追っているようだが、そんなところあったかな、と口にする。
『リスピア、か……』ルァンはリエルトと恭介にのみ聞こえるように声を届け、天井へ視線を巡らせる。
『月の女神エリスの愛する国。我が太陽は如何なる攻撃をも退けるが、エリスは魔による攻撃を退ける。そして、自らが知りたい事象の糸口も見つかるかもしれない。
シェリアは閉められた扉を見つめたまま、リエルトとカインの言葉を思い出す。
『記憶の障害があると』一体、カインには人に話せず抱え込んだ秘密がどれほどあるのか。
それを分かち合えぬ悲しみと孤独を思い、シェリアは目を閉じる。
リスピアで一体何があったのか。そして、リエルト達は無事でいてくれるだろうか。
そして、自分の身体は――いつまで持つだろう。
不安を抱えながら、シェリアはラーズとカインの報告を待つことしか出来なかった。
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