事情を聞いて駆けつけたヒューバートは、ありがとう、と言ってレスターを労った。
当然の事をしたまでで礼を言われる事ではありません、と逆に頭を下げたレスターに、ヒューバートは笑みを見せる。
「相変わらず硬いね。どう致しまして、でいいよ」頭を下げたままのレスターの肩を軽く叩き、アヤのほうを向く。
「……視えましたか」ヒューバートの視線はいつもより強い。
「はい…」恐怖のせいか、すっかりしおらしくなったアヤは返事と共に小さく頷いた。
「姫。そろそろお分かりでしょう。それが貴女の力なのでしょう、とヒューバートは言い含めるようにして聞かせ、一度ゆっくり目を閉じてから、それなのに、と口にする。
「ご自身でも少しは気にされていたのでしょう? ……なぜ、すぐにレスターへ相談されなかったのですか?」レスターに相談していれば同じことが起こっても、アヤの予知が外れるのかどうかも確かめることはできたし、二人ともこんなに怖い思いをしなくて済んだかもしれないのだ。
「ごめんなさい……言い訳になりますが、本当にあれが泉のせいで得た能力なのかもわからないし、もしかしたら気のせいかと、思って……。無言で頷くアヤ。
「はっきり言います。ヒューバートは『僕にもそう思った時期はあります』と同意する。
「僕は貴女の言葉を……レスターを守ってくださるというお言葉を信じた。自分の名前が出たことを不思議に感じたレスターは、怪訝そうな表情を浮かべつつ、ヒューバートとアヤに尋ねてくる。
「……姫はね」アヤが止めようと声を掛けるが、彼は首を横に振った。
「ううん、もう夜襲とレスターのところだけは話してしまう方がいいよ。真面目な顔でヒューバートは提案して、レスターやリネットは、じっとアヤを見つめている。
その視線に居心地の悪さと、後ろめたさを感じつつ……アヤは重い口を開いた。
明日、夜襲が起こるかもしれないこと。
そこでレスターが、死んでしまう事。
だが、それはこの力が発現する前の事で、自分が来たことによっていろいろ外れていることもあるという。
アヤが言葉に詰まりながらも話し終えると、レスターは重苦しい顔をしたまま、アヤを見つめていた。
「……だから、姫は『死ぬ』という言葉に敏感だったのですね」自分が死ぬという言葉をアヤから聞かされるのでなくとも……いい気分はしない。
しかし、アヤはルエリアやヒューバートらにそれを防ぎたいと言ってくれたのかと思うと、胸がいっぱいになる。
「ありがとうございます……。ですが、とレスターはすぐに元の表情に戻って、アヤと視線を交える。
「わたしはそう簡単に死んだりしません。一緒に生きるという約束もした。それは俗に死亡フラグというのだが、アヤ達の世界のごく一部で使われている用語など、レスターに知る由もない。
「あ、あの、なんだかわたしが口を出していい話じゃない気がするのですけど……」先ほどからずっとヒューバートの側で話を聞いていたリネットが、おずおずと意見をする。
「アヤ様のお力で、クレイグたちの潜伏先を知ることは……できないのでしょうか……」